言語とリーダーシップについて

kids with rainbow painting

先日、『宇宙一美しい奇跡の数式』の著者であるノ・ジェス氏の貴重なセミナーにご招待いただき、「先行き不安が広がる今の世界を、日本がすでに持っている良いところを発揮してリーダーシップをとっていくことが求められている」といった内容のお話を聞かせていただきました。

その中で、日本人は過去から続く現在の学校教育の中で、「考えオンチ」が多すぎるという話があり、まさしくリトル・リーダーアカデミーが補完しようとしているところを、一言で明確に捉えた言葉だなと思いました。

「考えオンチ」とは?

ノ・ジェス氏によると、『考えオンチ』とは、「人の話を深く聞き、周囲を深く観察すると出てくるべき『良質な質問』が生まれにくい状態の人」のことを指すそうです。確かに、日本では暗記教育が基本なので「考えさせる」教育が欠けていると長年言われてきました。2020年度から小学校に導入された文科省による新・学習指導要領では、「子供たちに必要な自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力を育む」とされています。やっと、「考えオンチ」に対する施策が始まった感じでしょうか。

氏によると、これは東洋と西洋で物事の捉え方が違う文化が背景にあるともいいます。東洋は2次元の世界で物事を捉えており、現実を肯定する文化があると言います。例えば、「リンゴが木から落ちた」場合、「リンゴが木から落ちるのは当たり前」と捉え、質問が浮かぶとすれば”How”「どうやって落ちたのか」を考える傾向にあると言います。

対して西洋は3次元の世界で物事を捉えており、物事を分ける技術に優れていると言います。”What”や”Why”の質問が浮かびやすいそうです。「なぜリンゴは落ちたのか」ですね。こういった本質的な質問が浮かぶので、今までいろいろなことを生み出してきたと言います。例えば、資本主義、民主主義、弁護士などなどです。

氏によると、西洋の人は「うまく歌えるためにリードコーラスが入っているカラオケ」の考え版、「考えのカラオケ」が備わっていると表現されています。

言語が人の考えを形作る

カリフォルニア大学サンディエゴ校の認知科学者である、レラ・ボロディツキー氏は、「世界には7000語の言語があり、言語に存在するコンセプトによってその言語を話す人の考えや認知的側面が形成される」とおっしゃっています。(TED tallk 2018 )例えば、左右上下という単語がある言語と無い言語があり、オーストラリアのアボリジニの方々は東西南北で左や右を説明するそうです。

この解析を聞くまで、私自身、日本語と英語で育った人は思考の組み立て方が異なるのではないかと感覚的に思っていました。それを、ボロディツキー教授が科学的に分かり易く解説してくださって、頭の中のもやが消えました。

例えば、アメリカで出会った日本の大学で人類学の教授をされていた方に、「日本語を話しているときと英語を話しているときに性格が違って見える」と言われたことがあります。その時、確かに英語を話している方が自信を持って自分の気持ちをストレートに伝えることができたり、日本語だと柔らかい物腰になったりしているなと思ったのを思い出します。

現在、子どもから大人まで、幅広くアサーションというコミュニケーション手法を教えていますが、日本語でアサーティブになるのは英語で話すときよりもハードルが上がることを実感しています。アサーションとは、自分の気持ちや意見を相手の権利を侵害することなく誠実に、率直に対等に表現するコミュニケーション手法の一つです。アメリカで1950年代に開発された手法ですので、やはり英語の方が話しやすいんですね。「相手の権利を尊重しつつ・・・」というのがポイントなのですが、日本語だと慎重に理解を進めないと「相手の気持ちを慮って」とはき違えるケースがあります。言語バックグラウンドがなせる脳のトリックが働くゆえんですね。

リーダーシップ教育の内容によっては英語が有利?だけど・・・

リトル・リーダーアカデミーでは、リーダーシップを14のカテゴリーに分けて教えていきます。リーダーシップと聞くと、欧米の考え方という意味で使われることが多いように思います。例えば、諸外国で見られる1人の強いリーダーが周囲の人を引っ張っていくイメージが、農耕民族である我々のコンセンサスを取る手法と別物として見られたことにあると思います。

ですので、その点は、英語で教えたり、英語の言語が持つ背景を取り入れながら、肌感覚でリーダーシップを教える方が伝えやすかったりします。

ただ、これから世の中は変わっていきます。日本式の農耕民族型のリーダーシップのとり方、それはたまに「女性的なリーダーシップのとりかた」と言われたりするのですが、そういう場合は日本語で育ってる方が肌感覚的に理解が早いかなとも思っています。

リーダーシップもダイバーシティの時代

ボロディツキー教授 は、この世の中には7000もの認知的ダイバーシティがあるとおっしゃいました。これからは、リーダーシップも欧米式とか東洋式とかではなく、ミックスされたものが人々を率いていくのに必要なのかと思っています。

それを、うまくまとめて、新時代のリーダーシップを小さいころから身に付けてもらいたい。そう切に願ってやみません。